「金の糸を入れると、レーザー治療を受けることができなくなる。」「金の糸を入れると、サーマクールなどの高周波機器による治療を受けることができなくなる。」という噂が、巷に拡がっています。これについては、真偽のほどが大きく分かれます。
結論から言うと、純度の低い金の糸を使用した金の糸美容術(美容法)の術後は、レーザー治療も高周波治療も危険です。逆に、純度が高い金の糸を用いている金の糸美容術(美容法)を受けた場合には、これらの心配はいりません。ではなぜ、このような噂が広まってしまったのでしょうか?それはひとえに、純度が低い金の糸を使用していたクリニックがあるからです。
約2年前、日本美容外科学会で衝撃的な発表がなされました。リウマチの金療法を行っている患者さんの顔にレーザーを照射したところ、レーザーを照射したところの皮膚が青く変色してしまったというものです。また、純金の金箔を購入してきて、それにレーザーを照射したところ、黒く変色したというものです。
リウマチの金療法というのは、金チオリンゴ酸ナトリウム(商品名:シオゾール)という薬剤を注射して、リウマチの症状を抑える治療法です。金チオリンゴ酸ナトリウムは、非常にイオン化しにくい(水に溶けにくい)金属元素である金を、激しい化学反応で無理やりイオン化した製剤です。通常の状態では、たとえ体内に埋まっていたとしても、金はイオン化せず、厳しい物理的条件と激しい化学反応を加えて初めてイオン化するのです。したがって、たとえ金イオンが原因で、金療法を行った患者さんのレーザー照射部位が黒くなったのだったとしても、金の糸美容術(美容法)では金はイオン化しませんので、このようなことは起こりません。もし、金の糸美容術(美容法)で金がイオン化するというのであれば、金歯が歯茎に挿入されている患者さんでも、同様のことが発生していてもおかしくはありません。しかし、皮膚のレーザー治療が頻繁に行われ始めて約30年近く経ちますが、金歯を入れている患者さんに、レーザー照射部位の皮膚変色の報告は、1例もありません。
金箔に対してレーザーを照射してみた実験についてですが、これには大きな疑問があります。市販されている金箔の純度についてです。「24金」という表示は、日本では99.99%の純度があれば、24金という表示が可能です。また、「純金」という表示は、習慣的に「24金」のことを表していますが、その表示自体に明確な基準はありません。したがって、たとえば「23金」=24分の23=約96%以上の純度であれば、「純金」と称している場合もあるようです。そのような現状では、「純金」や「24金」の金箔というものが、正確に限りなく100%に近い純度の金箔であるということではない可能性があるのです。また、工業用や手芸・DIY用の製品の場合、表面加工が施されている場合もあり、この加工に用いた化学物質がレーザーに反応した可能性もあります。
これらの発表の時に、実際に金の糸美容術(美容法)を受けた患者さんの皮膚が、レーザーで変色してしまった症例報告もありました。そこで、実際に当院で金の糸美容術(美容法)に使用している金の糸(純度99.999%以上)にレーザーを照射してみました。すると、まったく変色も変形もしませんでした。つまり、純度が低い金の糸を使用した金の糸美容術(美容法)の場合には、レーザーを照射すると皮膚が変色し、純度が高い金の糸を使用した金の糸美容術(美容法)の場合には、このようなことは起こらないと考えられます。そうすると、前述のような「純金」という言葉の意味合いを考慮すると、あるクリニックでは、「「純金」の金の糸を使用しています。」という言葉を用いて、純度において96%以上ではあるが、比較的純度の金を使用していて、その純度の低い金の糸によって、このようなレーザーによる皮膚の変色が発生したと考えられます。